去年の夏、旅の途中で
どこでもいいからどっか行きたいなと思うことがよくある。大抵、何かがうまくいってなくて悩んでいるとき。
夏休みだし、ほんとにどっか行っちゃおう!と思って選んだ旅先は、四国。
人がたくさん訪れるようなthe観光地よりも、静かに自然を感じられるような場所へ旅するほうがすきだ。
四国は、目的地として設定しない限りどこかへ行く道中で通過したりすることもなく、本当に未知の土地という感じがする。
本州から四国へ上陸する際には、岡山県と香川県間を結ぶ快速マリンライナーに乗って瀬戸大橋を渡った。
日当たりの良い窓側の席に座ると、いつものようにイヤホンを耳に差し込む…
いやいや、せっかく旅に出たのに自分の世界に閉じこもってどうするんだ。
イヤホンを取り、スマホをカバンにしまって車窓からの風景を眺める。
マリンライナーからは瀬戸内海とそこに浮かぶ数多くの島々が見える。
こんなに島があるんだ…
その島々の間を小さな船が何十隻と移動している。
島の大きさに比べたら、船の大きさなんてほんとに米粒のように小さくて、その船に乗ってる人なんて目に見えない点くらい小さいんだろうなとぼんやり思った。
…なんか可愛い。
広い海に小さな船で、小さな小さな体で果敢に漕ぎ出していく人間の様が、なんだかとても滑稽で愛おしく感じた。
まるで小さな子供が大の大人に本気で勝負を挑んでいるよう。
そっか、人間って頑張って生きてるんだ。大自然の中でそれに抗いながら生きているんだ。わたしもそのうちの1人なんだ。
自分が生きる世界は町の中、学校の中にあると思っていたけれど、そんなことはない。世界はとてもとても広くて、自分の心の中で、狭くちっぽけなものにしてしまってるだけかもしれない。
いま悩んでいる人間関係、自分の能力に不釣り合いな仕事、そんなことは小さな世界の中でおこる小さな小さな出来事。
悩みとして自分の心の中に置いておくには小さ過ぎることかもしれない。